Low-eペアガラスの熱割れを気にせず貼れるフィルム一覧
目隠しも暑さもUVカットも問題なく貼れます
国家資格1級ガラスフィルム施工技能士
Harumado 平井 喬
この記事を読むための時間:3分
2024年5月12日更新
窓のお困りごとを解決したくてフィルムについて調べてみると、「Low-eガラスだと熱割れするから貼らないほうがいい」と見聞きすることありませんか?「えー!フィルムを貼ったらガラスが割れる?なぜ?じゃあ貼れないかも…」となりますよね。結局カーテンやロールスクリーンで対策をすることになり、理想の窓からやや外れるということに。
でも、ちょっとまって下さい!実はガラスフィルムのプロが選ぶフィルムなら、Low-eペアガラスにも貼れるんです。
プロはフィルムを貼る前に、必ず「熱割れ計算」を行います。この計算はガラスが耐えられる強さとフィルムが与える強さを比較するためのものですが、国家資格「ガラスフィルム施工技能士」にとって必須の作業工程。ガラスの品番やサイズ、方角などをもとに行う計算の結果、「フィルムの強さがガラスの強さを超えないので貼れます」と根拠をもってフィルムを選ぶことができます。ただ、ネット上では「どんなフィルムでも絶対に貼れない」とか「貼るとガラスが粉々になる」など誤った認識が散見されますし、ガラスや住宅関連の業者でも「熱割れ計算」を知らないことがあります。
そこでこの記事では、ガラスの熱割れと「熱割れ計算」について詳しく記すとともに、熱割れを気にせず貼れるフィルムをご紹介します。
普段寄せられるご質問にお答えするような感覚でまとめますので、ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
Table of Contents
熱割れとは
寒暖差が原因
人の目や手では分かりませんが、ガラスは日中の寒暖差によりわずかに膨張と収縮を繰り返しています。特に冬の朝、夜明けのタイミングはガラスが凍てついており、ここに太陽光が当たるとガラスが温められて急激に膨張します。この時ガラスに大きな負荷がかかり、負荷がガラスの設計値を超えると、まるで氷にお湯を注いだ時のようにガラスの端から「ピシッ!」とヒビが入ります。これが熱割れです。いきなり粉々に割れて飛び散るわけではなくひび割れすることが特徴です。
熱割れしやすいガラスの特徴
熱割れはガラス特有の自然現象なので、どんなガラスでも起きる可能性があります。特に下記に当てはまる場合は他のガラスよりも熱割れしやすいと言えます。
性能に特徴があるガラス
●緑や茶色、グレーなどの色付きガラス
●Low-eガラス
●ワイヤー入りガラス等
環境に特徴があるガラス
●冬はひたひたに結露する
●太陽光がよく当たる(東~南~西)
●日光と影が同時に差し込む
●サッシが濃い色
貼らないほうがいい理由
フィルムはどんな種類のフィルムでも、日射熱を反射・吸収する作用があります。言い換えるとフィルムを貼るとガラスに熱の反応があるということなのですが、この熱反応がきっかけとなり、稀にガラスの熱割れを助長することがあります。これが一般的に言われている「貼らないほうがいい」の理由です。この理由自体には納得感があり、理にかなっていると思います。
リスクを事前の計算で回避
このような熱割れはやはりリスクと言えます。ただ、フィルムを貼る前に様々なチェック項目を数値化し、ガラスが耐えられる強さとフィルムが与える強さを客観的に比較することで貼れるフィルムを選ぶことができます。
熱割れ計算とは
ガラスが耐えられる強さとフィルムが与える強さを数値化し、それぞれの大小関係を比較することで熱割れリスクを判断するためのものです。フィルムが与える強さがガラスの耐えられる強さの範囲内であればフィルムを貼れます。少し専門的になりますが、フィルムの与える強さを「発生応力」、ガラスの耐えられる強さを「許容応力」と言いますので、以降発生応力と許容応力として記すことにします。
国家資格技能士の必須作業
この熱割れ計算は国家資格「ガラスフィルム施工技能士」にとって必須の作業。確認する項目は
・ガラス光学性能(品番)
・フィルム光学性能(品番)
・ガラスサイズ
・ガラス種類
・ガラスの厚み
・中間空気層の厚み
・空気層の種類
・設置方角
・サッシの色と材質
・カーテンの材質
・カーテンとの距離
・太陽光の当たり方
・日陰のできかた
など多岐にわたります。どれもプロ目線で正確に確認する必要があり、これらを抜かりなく確認することで根拠をもってフィルムを選べるようになります。
実際の計算結果
ここで例として実際の熱割れ計算結果をご覧いただきます。サンプルとしてお示しするのですが、最もご依頼の多いパターンの「Low-eペアガラスに目隠しミラーフィルム」を貼ったケースです。目隠しミラーフィルムは全てのフィルムの中で発生応力が高いフィルムの一つですので、このフィルムの数値が発生応力の上限とお考えいただいていいでしょう。窓のサイズは85cm×195cmで、掃き出し窓の平均的なサイズです。
計算例)目隠しミラーフィルム貼り付け
フィルム:GLAFIL/RSP35
ガラスの許容応力が17.7MPaに対して、フィルムの発生応力が最大で15MPa(東向き)となり、発生応力が許容応力を超えませんので問題なくフィルムを貼れる結果となりました。ところで、上記の熱割れ計算結果を見た時に、「発生応力が意外と高い?」と思ったかもしれません。計算式の都合で結果がゼロにはならないのですが、ミラーフィルムの発生応力が最大で15MPaというのはよく見かける数値です。数値はガラスのサイズや日陰の入り方で変わることがありますので、フィルムメーカーは「念のため許容応力に対して1割ほどの余裕をもってフィルムを選ぶといいでしょう」とアナウンスしています。17.7MPaに対して15MPaは余裕がある数値と言えます。
熱割れ実績ゼロ
このような熱割れ計算をもとフィルムをご案内した結果、弊社のLow-eペアガラスのフィルム施工実績520件のうち、貼り付け後の熱割れはゼロです。過去には横2m×縦2m20cmという大きなガラスの貼り付け依頼もありました。適切なフィルムを選ぶことでLow-eペアガラスにも網入りガラスにもフィルムは貼れます。
Low-ペアガラスに貼れるフィルム一覧
さて、ここからはLow-eペアガラスに貼れるフィルムをご紹介です。実際にご施工をしたビフォーアフター画像と、許容応力、発生応力を記載します。比較しやすいように許容応力は全て17.7で統一し、発生応力は各フィルムの最大の数値とします。フィルムが貼れる場合は「〇」、貼れない場合は「✕」と表現し、計算の前提となるガラスのサイズは、横85cm×縦195cmの平均的な掃き出し窓サイズです。
目隠しフィルム
ガラス許容応力 17.7MPa
フィルム発生応力
ミラーフィルム 15.0MPa 〇
すりガラスフィルム 11.0MPa 〇
ホワイトフィルム 13.0MPa 〇
最も施工依頼の多いフィルムが目隠しフィルムです。外から中が見えず中から外が見えるミラーフィルムや、すりガラスのように見た目をぼかせるその名もすりガラスフィルム、障子のように白くできるホワイトフィルムなどが代表格です。とりわけミラーフィルムは全てのご依頼のうち6割ほどを占める圧倒的に人気のフィルム。その大半がLow-eペアガラスに貼るご依頼です。外から見た目隠し効果と室内の明るさの違いでフィルムのバリエーションがあります。
詳しくはこちら↓
遮熱フィルム(暑さ対策)
ガラス許容応力 17.7MPa
フィルム発生応力
ミラー遮熱フィルム 15.0MPa 〇
透明遮熱フィルム 12.0MPa 〇
遮熱とは窓から入る暑さをガラス面でカットする性能のことです。フィルムを貼ることで室内に入る日射熱の量を減らし、エアコンの効きがよくなる効果があります。ミラータイプと透明タイプがあり、ミラータイプは窓際の暑さを6割~7割もカットでき、透明タイプでも4割~5割ほどカットできます。ところで、Low-eペアガラス自体に遮熱性能があるのですが、フィルムの遮熱性能の方が高いため、フィルムを貼る効果はしっかりと得られます。
日焼け止めフィルム
ガラス許容応力 17.7MPa
フィルム発生応力 10.0MPa 〇
窓から入る紫外線を、99%以上カットできるフィルムです。発生応力は全てのフィルムの中で最も低いため、熱割れの心配がまずありません。カットできる領域は、通常タイプが300㎚~380㎚、高領域タイプが280㎚~400㎚です。紫外線チェッカーでビフォーアフターの紫外線量を測ると、「1000」ほどの数値が一気に「0」に変わるので、その様子をご覧になったお客様から「おー!」「きゃー♪」とよく歓声が上がります。効果が目に見えてわかるフィルムです。
詳しくはこちら↓
防犯フィルム
ガラス許容応力 17.7MPa
フィルム発生応力 10.0MPa 〇
他のフィルムよりも7倍以上も厚く、窓に貼ることで簡単にガラスを打ち破れなくなるフィルムです。日焼け止めフィルムを分厚くしたフィルムなので、基本的に熱割れの心配はありません。警視庁目録の高い防犯性能がある製品に付与される「CPマーク」の対象製品で、ガラスを割り始めて侵入まで5分以上かかるため犯行をあきらめさせる効果があります。似た製品でCP製品の「防犯ガラス」がありますが、既存ガラスの交換が必要で多額の費用がかかります。その点、既存の窓に貼るだけのフィルムは費用を抑えられることから、近年個人宅向けに急速に広がっています。
これらのフィルム以外にも断熱フィルムがあります。断熱とは室内の暖気がガラス面で冷やされにくくする性能のことです。実はフィルムの断熱性能はペアガラスの断熱性能よりもずいぶん低いため、率直にいうとペアガラスに断熱フィルムを貼っても効果が出にくいことが多いです。そのためこの記事では断熱フィルムについてスルーしています。どうしても窓の断熱が必要な時は、まず「新しいペアガラスに交換」をご検討いただくことがおすすめです。
サンプルと体感キットで事前確認
見た目・明るさ・性能
ここまでお読みいただきまして、いかがでしたか?できるだけ分かりやすくまとめたつもりですが、フィルムの明るさや性能等について、疑問や質問などをお持ちではないでしょうか。弊社では気になるポイントをご確認いただくために実物サンプルと体感キットを用意し、事前に訪問しております。「画像よりも納得感が違う」と好評で、同時にお見積もりもお伝えいたします。訪問は一切無料です。
フィルムの専門家だからこそ
フィルムのことをハウスメーカーや工務店に相談することもあると思います。「熱割れする」と言われると不安にもなるでしょう。弊社では取引のある140社ほどのハウスメーカー・工務店に熱割れ計算について詳しく説明をすると「しらないことばかりだった」「数値で見ると安心する」など言われます。
フィルムのプロだからこそ分かることがあります。弊社では専門的なことを分かりやすくお客様や取引先と積極的に共有することを心がけています。どんな疑問や質問にも丁寧に対応いたしますので、お気軽にお問い合わせ下さいませ。
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