国家資格1級ガラスフィルム施工技能士が解説【災害編①-防災・飛散防止フィルムの効果と特徴】
絶対に割れないガラスはない!予防こそ最善の対策
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災害は多発・激甚化の傾向
昨今の地震の多発や台風の強大化は目に見えて顕著です。
2020年の台風10号では、実被害こそ少なかったものの勢力が「史上最強」と盛んに報道され、九州を中心とした西日本各地で計画休業や買い締めなど、広く影響が出ました。
窓ガラス施工業を営む弊社にもひっきりなしに連絡が舞い込み、可能な限り緊急で対応いたしましたが、スケジュールや人員の都合でやむなく半数ほどは台風後の対応やお断りするなど、手いっぱいの状況でした。
一方で、予期される災害時の窓ガラス対策として、飛散防止フィルムが認知され始めているとも感じました。
しかし、認知が広がってお客様と多く接するようになり、フィルムの効果について誤った認識を持たれているケースがあるなと感じることもありますので、ここでは改めて、飛散防止フィルムの効果と特徴を説明させて頂きます。
やや長い文章のため全5回の連載記事にわけて公開しますので、最後までお付き合いいただけますと幸いです。
飛散防止フィルムの効果と特徴
①災害対策
-台風・地震・人当り等の衝撃でガラスが割れてもガラス片が飛び散らせない-
②UV99%カット
-肌の日焼けや家具・設備などの劣化を防ぐ-
③無色透明
-見た目は変わらず景観を守る-
以上がフィルムの効果と特徴です。
「飛散防止」「UV99%カット」「無色透明」
これらはすべてJISにて基準が定められていて、台風を想定した物当たり実験や、地震を想定した振動実験、透明性の数値などが細かく設定されており、メーカー各社の飛散防止フィルムはJISに適合しています。
【参考資料:JIS A 5759 建築窓ガラス用フィルムの種類と性能】
「災害対策」が最大の目的
さて、上記には「災害対策」を飛散防止フィルムの効果のトップバッターとして書いています。
つまり、最大の目的です。
その効果どの程度なのか、百聞は一見に如かず!ということで、飛散防止フィルムの効果を実験した動画がありますので、飛ばさずにご覧ください。
飛散防止フィルムの実験動画
【出典:3M™ スコッチティント™ ウインドウフィルム ガラス破壊実験】
実験を行ったのは窓ガラスフィルムのトップメーカーであり、国内シェア1位のスリーエム社です。
フィルムの厚みは標準的な50μmで、JIS A 5759に適合した飛散防止フィルムを使用しています。
実験の内容は、
1.物当たりを想定(ショットバック試験)
2.地震を想定(層間変異試験)
それぞれフィルムを貼り付ける前と後の映像です。
割れないためではなく飛び散らせないため
ご覧いただくとお分かりいただけるかと思いますが、飛散防止フィルムは窓ガラスが割れないようにするものではありません。
ガラスが割れた時に発生する破片が、周囲に飛び散ることを防ぎ、被害を軽減するためのものです。
ここが間違いやすいポイントです。
「フィルムを貼って窓ガラスを強化したい」
「割れないようにしたい」
とご連絡をいただくことが多いのですが、どんなタイプのガラスでも本来備わる強度を超える加工はできませんし、割れる時は割れます。
ガラスメーカー各社も公式HPで、「割れないガラスはない」と発表しています。
日常生活や業務で割れることはまずありませんが、災害時にはガラスが割れやすい条件がそろうので、やはり割れることを前提とした飛散防止対策が必要となります。この条件とは「ガラスの性質」と「災害時の圧倒的なパワー」です。
またガラスは割れてからでは一切の安全対策が取れないので、割れる前、つまり災害時ではなく平時の対策が必要となります。言い換えると「予防」こそ最善の対策と言えるでしょう。
この連載では、台風や地震時に窓ガラスがどんな影響を受けるのか?そしてその時人はどう行動がとれるのか?さらに予防こそ最善の対策との観点から、全5回に分けて記事をまとめます。
次の記事では、ガラスが割れやすい条件のひとつである「ガラスの性質」についてです。
次記事→国家資格ガラスフィルム施工技能士が解説【災害編②-「絶対に割れないガラス」がない理由】
◆◇◆連載シリーズ:国家資格ガラスフィルム施工技能士が解説◆◇◆
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