がんばった!しかし誰で、何なんだ?
車のボンネットに張り付く小さな虫。
6本の足でがっちりくっついて、風圧で飛ばされないようにしています。
彼に気づいたのは高速入口手前。多くの車が規則正しく止まらず進む中、救出のために払ってあげることはできません。
しょうがなかく高速に乗り「速度が上がれば離れるだろう」と思っていたのですが・・・、全く離れません(--;)
時速が100キロに達しても微動だにせず、台風並みの風速の中にいるはずですが、必死にしがみついています。
むしろ速度が上がるほどに頭を下げ、足が広がり、抵抗を受けにくい姿勢をとるではないですか。
「これが虫の本能なのか・・・」と思いつつ、そこには「絶対に離れない」との意思すら感じるようになていました。
「なぜ、そこまでしてなにをしたいのか?」と注目をせずにはいられません。
そしていつの間にか「がんばれ!」と私は独り言を言うではありませんか。
「いまから追い抜くよ。しっかりつかまるんだよ」「坂道はスピードが上がるよ」と、状況変化を伝えているのです。
呼応するかのように、彼はずっと張り付いたままです。
まるで台風のような環境の中、極めて厳しい環境でもしがみついて目的を達しようとする姿勢に、驚きと感動を禁じえません。
「・・・すごい。本当に・・・すごい!」
ところで、じっと見つめていると、最初はすずめ蜂かな?と思っていましたが、どうも蜂じゃないように見えてきました。
すずめ蜂よりも少し小さく、眼のあたりも見慣れた種類のものとは違うような気がしたのです。
どうしても気になったので、知り合いの生物学者に画像を送ったところ「よくわからない」との返事。
なんだかモヤモヤが解消されません。
がんばってほしいけど、モヤモヤ~。
目的地まで一緒に来てほしいけど、モヤモヤ~。
誰かわからず、モヤモヤ~。
そして高速をおりて目的地まで「残り2分」の表示。
さあ、友よ!もう少しで君のことが分かるぞ。目的も、名前も!
しかし速度を落として信号待ちの真っ最中。
「ああ!そんなっ!」
なにかを達したといわんばかりに友は飛び去っていきました。もう少し、あと少しだったのに・・・。
当然、私が勝手に繰り広げた妄想ワールドの相手なんかしません。彼は本能に従い行動しただけなのです。でも私の妄想ワールドはまだ少し続きます。
「がんばった!しかし君は、いったい誰で、何なんだ?」
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